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タワーは赤く塗れ!/奈良の大安寺にあった双塔の存在感がいま甦る 2007年11月30日(金)日中は晴れて気持ちのいい風、夕方以降はぎゅっと冷える感じ

奈良市埋蔵文化財調査センターでは現在、年に一度の特別展「平城京展」を開催中。今年のタイトルは「並びたつ大塔 ~大安寺塔跡の発掘調査~」。大安寺の来歴と、塔跡の発掘の成果が紹介されています。
大安寺は今はだいぶ寂しい感じのお寺ですが、もともとは飛鳥の地に天皇の勅願で建てられた由緒ある寺。平城京遷都とともに移転して、東大寺建立までは最大規模の寺でした。
旧境内の発掘調査で出てきたのは大量の瓦、そして金属製品。これには推定高さ七十メートルのツインタワーの軒先に下がっていた風鐸や、ぞれぞれの塔のてっぺんに屹立していた、総重量十トンを超えると思われる巨大な相輪の破片が含まれます。今回、当時の金メッキも鮮やかに、平城京展でのお披露目となりました。すごい迫力です(⇒写真)。ほかに、瓦に刻まれた文様の変遷が見られたり、最初の「百済大寺」から大安寺に至る歴史が一望できる展示もあり、なかなかの見ごたえです。開館は平日のみですが、12月26日までやっているので、機会のある方はぜひとどうぞ。
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200711_daianjitower1大安寺の双塔はあまりにまばゆく光り輝いていて、山のむこうの海まで昼夜問わず照らしてしまい、堺の漁師が「魚が獲れなくなった」と抗議に来たという伝説がある。もし現存していれば現在の奈良でも最大規模の高層建築(県内でいちばん高いビルの倍近い高さ)、しかも「青丹よし」と讃えられた、目に痛いほどの朱と緑と、金メッキの金属部品で飾られた巨大な双塔は、どれほどの輝きを放っていただろうか。ビジュアルを想像するだけで気が遠くなりそうだが、さらに風鐸がガゴンガゴンと鳴っていたのだ(⇒現在の東大寺大仏殿の風鐸の音)。残っていれば、どれほどの存在感で歴史をアピールし、信仰を集め続けてきたことだろうか。

ところで、いま大安寺には、高い塔が建っている。お寺の塔ではない。NTT大安寺ネットワークセンターの通信塔だ。古代には天皇が仏塔を建てまくって人気を集めていた。いま塔を建てまくって人気を集めているのは電話事業者というわけだ。ここは電電公社時代からの鉄塔で、マイクロ波の中継もやっているが、もちろん携帯電話の基地局としても重要な役割を担っている。
ケータイ通話のサービス自体は人気があるが、基地局の塔はその存在感をぎりぎりまで消されていて、なんだか気の毒な気もする。べつに派手に塗ったからといって戦時のミサイル着弾率が上がるわけでもなかろうに、こんなに地味でなくていいのではないか。というか、いっそ「青丹よし」の配色にでもして、現代を生きる人々の漠然たる心のよすがになってくれたら、塔として建っている甲斐があるというものではないか。

200711_daianjitower2以前からそのように思っていたので、試しに赤く塗ってみた。
風鐸も吊ったつもり。風の吹く日はガランガランと音がして、その霊力で禍いを払うのだ。輻輳が起きませんように! ばかに高い料金を請求されませんように! 電子決済が不正使用されませんように! 通話品質がよくなりますように! ……うちはウィルコム派なので実のところこういった災厄とはあんまり関係ありませんが、職場への行き帰りに必ず眺めることになる塔がこんな雰囲気だったら、ちょっと気分は違うと思います。
うちの近所を歩いていると興福寺の五重塔がよく見える。見えただけで、なぜかとても嬉しい気持ちになる。西の京の近くを通ると、薬師寺の双塔を眺めながら暮している人のことをうらやましく思う。
JR奈良駅近辺の高層ホテルや高層マンションを眺めてもいい気分にはならないけど、この鉄塔なら、いい感じなんじゃないかと想像します。まちづくり的にも、配色じたいは歴史的景観の再現みたいなものなので、問題ないことにする。けっこう人気が出そうな気がするんだけどなあ。

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